―其ノ壱―

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 ということで、大介は目隠しをそっと押し上げて視界を確保した。まず最初に飛び込んできたのは、キレ顔のきずなとその貧乳。 「誰が目隠し取っていいって言ったかな?」 「いや待て! 俺だけじゃなくて六原もだって!」  自分だけが責められて堪るものかと、大介は理将へ目を移す。が、そこにいたのは意外にもきちんと目隠しを付けている理将であった。 「リショーはちゃんと付けてるじゃん! サイテーなのは大介一人だよ!」 「そんなはずは……」  納得のいかない大介は、その後も理将の観察を続けた。今のうちに女子達の水着を拝めばいいということも忘れて。  目隠し状態にも関わらず、理将はニヤけている。見られない悲しみを妄想で補っているのだとすれば、あまりにも虚しい光景だ。しかし、どうやらそうでもないらしい。秘密は不自然な動きをしている彼の手にあった。 「六原、手を見せろ」 「え? ちょっ」  有無を言わさず大介は理将の手を掴む。彼の手に握られていたのは、小さな正方形の紙であった。――ただし、目玉が一つギョロリと動いている奇妙な紙である。  言技“壁に耳あり障子に目あり”。それが六原理将の言技であり、能力はその名の通り壁に耳、障子に目を付けることができる。  この言技、壁に耳の方は使用頻度が高いのだが、障子に目の方はあまり活躍の場がない。すっかり洋風の文化に染まった現代の日本においては、障子がめっきり減ってしまったからである。  そこで理将が己の言技を有効的かつ変態的欲求を満たすために思いついたのが、この“仕込み障子”である。手に仕込みスカートの下に持っていくもよし、女子更衣室の壁に貼り付けるもよし、今回のように見てないふりをしつつ女子の水着を堪能するもよし。 「あはは……えーっと、コレはその……」  理将が言い訳をするより早く、きずなが大量の砂を障子に貼り付いている目玉へぶちまけた。目は視覚と共に痛覚も繋がっているので、大量の砂が目に入った理将はその痛みで「ギィヤァァァァァ!」と悶絶する。 「サイッテーだよリショー! 他にも持ってるなら障子全部捨てて! じゃないと絶交だからっ!」 「ぜっ、ぜぜぜ絶交!? そんな! 待ってくれよきずなっち!」
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