―其ノ壱―

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 というわけで、男子一同はへらへらと何事もなかったかのように女子達との合流を図った。 「よう! こんなところにいたのか!」  理将が片手を上げて声をかけると、女子達は怪訝な表情を見せた。仕込み障子と言技との併用で覗きを行った彼の好感度は、只今地に落ちている。 「何よアンタら。生き埋めにしたはずよ?」 「生き埋め……」  育が発した物騒なキーワードに、眼帯少女を探している男は一見冷静に見える表情に若干の焦りを見せた。そんな彼の存在に、女子達も気付く。 「そちらの方はどなたですか?」と、叶がビーチボールを抱えながら尋ねる。 「連れと逸れて困ってるんだってよ。ちなみに、きずなっち達は眼帯付けた銀髪の女性なんて見てねーか?」  理将の問いに少しだけ考える素振りを見せた後、四人共首を横に振った。 「じゃあ探さないとね!」と、きずなが大方予想通りの反応を示し駆け寄ってきた。 「他にその人の特徴とかありませんか?」 「ん? おお……まさにちょうどキミくらいの身長で、キミくらいの胸ッスよ」  赤髪をぽんぽんと叩きながら、男は探し人の特徴を追加した。若干馬鹿にされた上に軽いセクハラも受けたきずなは、激怒して両腕を無茶苦茶に振り回している。 「おー、そういう反応も瓜二つッス」 「馬鹿にしてるでしょキミ! せっかく人が親切に協力しようとしてるのにぃー!」 「あ、あの!」口を開いたのは、照子。肩まで海に浸かっている今の状態であれば、恥ずかしくはないようである。 「迷子センターは行きましたか? きずなちゃんサイズってことは、小さな子どもさんってことですよね?」 「テルちゃんそれどういう意味!?」 「迷子センターには絶対いない。そんなもん、あの人の米粒みてーなプライドが許さねーッスよ」  付き合いが長いからこそわかることもあるのだろう。男はそう断言して迷子センターという選択肢を除外した。照子は「ご、ごごごごめんさない!」と何も悪くないのに謝り、ぶくぶくと海の中に顔を沈める。
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