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シャギーが風呂の中に落ちた桶や椅子を回収していると、露天風呂内の岩陰に自分達以外の利用者がいることに気付いた。
「あれ? キミは……」
ムスッとした顔を向けたのは、フェイル所属の小さな男の子・見原新であった。
「何だ。先客がいたのかい。いたのだね。いたのかよ」
意味不明三段活用の言葉に気圧されたのか、お湯に浸かり過ぎのぼせたからなのかはわからないが、新はシャギーを無視しそそくさと風呂から出て行く。だが、少年はホワイトボードとペンを手にすぐさま戻ってきた。ここでシャギーは、新が言葉を発することができなかったことを思い出す。
『天吾の変態覗きクソ野郎が来る前からいた』と、新は速筆でホワイトボードに書き殴った文字を見せる。相変わらず、喋れないのに口が悪い。
「では、何故止めなかったんだい?」
『アイツは無駄にプライドが高い。見ていたと知られれば面倒なことになる』
「なるほどね」
そこまでのやり取りを見て誰かがいると気付いた他四人も、シャギーの元へ集まった。
「おー、フェイルのチビっ子じゃん」と、理将が新の頭を掴む。新がその手を振り解き『アキラに苛められたって言うぞ!』と書いたボードを見せると、理将は非常に綺麗な土下座を見せた。
「どうだ。ウォレ達と一緒にエデンの園を覗かないか?」
「なぁに、隠すことはない。そろそろそういうものに興味が出てくる年頃だろう」
一人ウンウンと頷いている速人に、新は冷めた目を向け文字を書き殴った。
『俺は毎日アキラと一緒に風呂に入ってるんだが?』
男達の脳裏に蘇るのは、昼間海で見たアキラのグラマラスな我儘ボディ。目前で勝ち誇った笑みを浮かべている少年は、その肉体を毎日隅から隅まで堪能しているというのだ。
完全なる敗北。男子高校生達は、小学生の前にひれ伏した。
「……どういう状況ッスか?」
入ってきたばかりの久蔵が戸惑うのも、無理からぬ話である。
その後、大介から事情を聞いた久蔵は頭の上にタオルを置き「覗きかぁ。若いッスねー」と温泉に蕩けながら口にした。
「でも、やめといた方がいいッスよ。俺も休暇中に仕事したくねーッスし」
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