―其ノ壱―

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 シャギーが風呂の中に落ちた桶や椅子を回収していると、露天風呂内の岩陰に自分達以外の利用者がいることに気付いた。 「あれ? キミは……」  ムスッとした顔を向けたのは、フェイル所属の小さな男の子・見原新であった。 「何だ。先客がいたのかい。いたのだね。いたのかよ」  意味不明三段活用の言葉に気圧されたのか、お湯に浸かり過ぎのぼせたからなのかはわからないが、新はシャギーを無視しそそくさと風呂から出て行く。だが、少年はホワイトボードとペンを手にすぐさま戻ってきた。ここでシャギーは、新が言葉を発することができなかったことを思い出す。 『天吾の変態覗きクソ野郎が来る前からいた』と、新は速筆でホワイトボードに書き殴った文字を見せる。相変わらず、喋れないのに口が悪い。 「では、何故止めなかったんだい?」 『アイツは無駄にプライドが高い。見ていたと知られれば面倒なことになる』 「なるほどね」  そこまでのやり取りを見て誰かがいると気付いた他四人も、シャギーの元へ集まった。 「おー、フェイルのチビっ子じゃん」と、理将が新の頭を掴む。新がその手を振り解き『アキラに苛められたって言うぞ!』と書いたボードを見せると、理将は非常に綺麗な土下座を見せた。 「どうだ。ウォレ達と一緒にエデンの園を覗かないか?」 「なぁに、隠すことはない。そろそろそういうものに興味が出てくる年頃だろう」  一人ウンウンと頷いている速人に、新は冷めた目を向け文字を書き殴った。 『俺は毎日アキラと一緒に風呂に入ってるんだが?』  男達の脳裏に蘇るのは、昼間海で見たアキラのグラマラスな我儘ボディ。目前で勝ち誇った笑みを浮かべている少年は、その肉体を毎日隅から隅まで堪能しているというのだ。  完全なる敗北。男子高校生達は、小学生の前にひれ伏した。 「……どういう状況ッスか?」  入ってきたばかりの久蔵が戸惑うのも、無理からぬ話である。  その後、大介から事情を聞いた久蔵は頭の上にタオルを置き「覗きかぁ。若いッスねー」と温泉に蕩けながら口にした。 「でも、やめといた方がいいッスよ。俺も休暇中に仕事したくねーッスし」
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