階層街(かいそうがい)

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「嘘。兄ちゃん、神獣がいるって信じてなかったよね.....兄ちゃんはまだあの事を気にしているんだよね、あれは、事故だって......」 「違うっ!」  苦しげに顔を歪ませ、エインがトトの言葉を遮る。 「ーー事故じゃない。事故なわけ、ないだろ。俺がトトを」  両親の死より一年前、ちょうど今と同じくらいの季節、時間帯。まだ病に冒されていなかったトトとエインは、兄弟喧嘩をしていた。  原因はいつもと同じで、神獣についての口論。上階層に伝わる伝説。階層街の上に広がる地上には神獣が住んでいて、美しい花々を育てているーー  トトはこれを信じ、エインは創り話だと信じていた。  二人は話題に上がるたびにお互いの考えをぶつけ、口論から取っ組み合いの喧嘩に発展することも屡々(しばしば)。  その日も、そうだった。 「兄ちゃんは疑り深いんだ、それでいつも母さんを困らせてる!」    二人の口論の場は上階層の商業区。商業区とは名ばかり、開かれている店は片手で数えるほどで、且つ、通貨ではなく物々交換での取引限定。  前日に銅線や小麦粉などを採掘し、交換で食料を手に入れていた。故に、採掘へ向かう二人の心には余裕のようなものがありーーそれが招いた悲劇だった。
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