後の祭り

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ーーーーーー ーーー 「おら持ってけーっ! 欲しいもんがあったら何でもくれてやらあ!」 『『『おおーっ!』』』 沸き立つ人垣の中でそう叫んでから、俺は人ひとりが容易に入ってしまえそうなデカさの麻袋をひっくり返した。ぶわっさー、と中身が辺りに転がる。 どこの特産品かもしれない仮面に置物、布や書物などだ。これらはすべて潰しーーもとい、楽しませてもらった屋台の景品たちである。隣のキョウも同じように景品をばら撒いていた。 『うは、ラッキー! あんたら太っ腹だなぁ!』 『おおっ! 俺これもらいっ!』 『あ、待てよ、それ俺が狙ってたんだぞ!』 途端に群がる住民たち。やっといて何だけど、そのあまりの勢いにちょっと引いた。 状況を簡単に説明しよう。ラオ達と別れた(置き去りにしたとも言う)あと、とにかく片っ端から目についたゲーム系屋台や催しに参加した俺とキョウは、それぞれが参加したところでことごとく勝ちまくって持ちきれないほどの景品を手に入れた。 さすがに紙袋では足りなくなってガレキ撤去に使っていた麻袋まで引っ張り出してみたものの、あっさりそれも一杯になってしまったので、こうしてギャラリーの方々に放出しているわけだ。 景品っつってもどこの部族のものかわからんような羽根つきマントやらでっかい置物やら、ぶっちゃけあんまりいらなかったからこうして配っているわけなんだけど……ここまで人が群がるってことは、価値のあるものが混ざってたんだろうか。 「おい、スイ何をぼけっとしている。野次馬の足が止まっている間にさっさと次に行くぞ」 「お、そうだな」 キョウに促され、その場をコソコソと離脱。そうなんだよ。遠巻きに歓声が上がったりするのは気持ち良いんだけど、観客が多すぎると見世物にされてるみたいで嫌なんだよな。逃げよ逃げよ。俺はぽいっと空っぽの麻袋を放り投げた。 早足でたったかその場を後にし、さてどうするかとキョウと顔を見合わせる。 「さすがに屋台の方は殆ど制覇してしまったか」 「だな。街の反対側に行きゃまだあるだろうけど……おっ?」 キョロキョロと視線を周囲にめぐらせ、あるものを目にした途端ピンときた。あれはちょっと面白そうだ。 「キョウ、そんじゃあそこ行こうぜ」 俺が指差す先をキョウも見る。で、俺が示したのはというと、 「腕相撲大会か……悪くないな」
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