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「だろ? そろそろ俺もこの溢れんばかりの男らしさを抑えるのは限界だからな。いっちょ俺の力強さを見せつけてやんよ」
「ツッコミ待ちか?」
「ここで突っ込まれたら泣くからな」
そんなやり取りを挟みつつ、テントの受付へ向かう。
「俺とこいつ参加しまーす」
自分とキョウを続けて指差しそう言うと、受付の若い男は『力自慢集まれ! 漢の腕ずもうトーナメント』と書かれた看板と俺の顔を何度も目比べたのち、釈然としないような顔で頷いた。
何が言いたい。
「えっと、腕ずもう大会に参加ですか?」
「あぁ」
なぜ念を押す。
俺が自分の男らしさについてガツンと言ってやろうかと考えていたら、後ろからキョウが口を挟んできた。
「二人だと何か不都合があるのか?」
「あぁいえ、それはないんですが。ただ、ただいまAブロックがあと一人で定員となりますので、どちらか一人Bブロックになりますが構いませんか?」
「ブロック? ーーあぁ」
ちらっと看板の横を見ると、トーナメント表が書いてある。どうも二ブロックに分かれて予選を行い、格ブロックの覇者どうしで決勝戦をすると。
「俺は別にいいぜ。キョウは?」
「問題ない。決勝まで行けばいいだけのことだ」
「そうそう。言っとくけど、俺はお前にゃ負けねーからな」
「え……あなた決勝まで行くつもりなんですか……?」
この受付、さっきから俺がどんなふうに見えてやがるんだろう。俺の隠しきれない雄々しさを感じきれないとは、まったく近頃の若者ときたら。
「けどアレだな。Bブロック埋まるまで暇だな」
それぞれのブロックは定員八人ずつ。俺とキョウを含めても、あと七人来るまで待たなくてはならない。
「……ふむ。では、暇つぶしに屋台でも探すか。二手に分かれ、景品を残らず獲って先に帰った方の勝ち。どうだ?」
「オーケー。罰ゲームは?」
「まぁ、この間と同じでいいんじゃないか?」
「こないだと同じって?」
「ほら、街に来て最初に巻き込まれた魔獣騒ぎの時だ」
そう言われて、あぁそういえば何かやらされたなぁと記憶がーー
『女性用の服を上下一式買ってーー』
トラウマが蘇った。ぜ、絶対に負けられない……!
「では、スタート」
キョウの柏手を合図に、俺は大通りを全力で疾駆した。
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