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「さて、公平なる勝負の結果俺に完敗したスイの処遇についてだが……」
「ざけんなテメー陰険茶髪! さっき『この辺の屋台は制覇した』とか言ってたからわざわざ遠くまで行って屋台探したのに、おもっくそ無事な屋台あったじゃねーか!」
十分後。さっき受付をしたテントの前で、よくわからん置物を詰め込んだ紙袋を放り投げて絶叫した。くっそ! 嵌められた!
「記憶にないな」
平然と嘘をつきやがる。公平な勝負はどこへ行ったのか。
「まぁ、罰ゲームは後で教えてやるさ。今は腕ずもう大会だ。『罰ゲームが気になって決勝まで行けなかった』なんて言われたらたまらんからな」
「言わねえよそんなの……」
俺の文句もどこ吹く風、キョウはぶーたれる俺の背中をAブロックのほうに突き飛ばした後、自分はBブロックへと歩いていった。くそ、何か納得いかない。
まぁいいさ。目の前の楽しみに集中してこそ快楽主義だ。俺は指定された台まで行き、軽く腕まくりをしてその台の上に置き、そういや相手誰なんだろとふと視線を上げて驚きに見舞われた。
向こうも同様だったようだ。俺の顔を見るなり、目を丸くしていた。
「……スイさんじゃないですか。どうしてここに?」
対戦相手ーー銀髪の少年、バートが先に口を開く。どうやらこいつも対戦相手を知らずに来たらしい。
「いや、そりゃ俺の台詞だ……お前、こういう力試しみたいなイベントが好きそうには見えなかったんだけど」
「まぁ、別に好きではないですよ」
ここで俺は違和感を覚えた。バートの口調が、前に聞いた時より大人びて聞こえた気がしたからだ。
「僕がこのトーナメントに参加したのはーー」
バートが何か言いかけたタイミングで、さっきの受付が準備はいいですかと聞いてくる。
俺は頷き、バートもため息を吐いてから頷いた。その余裕ある態度に、ふと嫌な予感がよぎる。
まさかーー
ーーまさかこいつは隠していたけど実は凄腕の身体強化使いで勝負が始まった瞬間俺の右腕が「レディーファイッ! おーっとエントリーナンバー八番スイ選手が電光石火の圧勝ーっ!」俺の右腕が、相手の右腕をあっさりと押し倒していた。
ですよね。
「痛たた……十歳の子供相手に本気出さないで下さいよ」
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