後の祭り

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ーーーーーー ーーー あの後、首尾よく俺もキョウもそれぞれのブロックで優勝し、当初の予定通り俺たちは決勝戦の舞台で雌雄を決することになったのだが。 『さぁ覚悟しやがれキョウ。鮮やかに負かしてやんよ』 『ほう。やれるものならやってみるがいい』 『両者いいですね? それでは、決勝戦! レディー!ファイッ!』 『はっ! キョウ、そういうのは殺られ役の台詞(ズガン!)』 『殺られ役の、何だって?』 『あ、いや、その……何でもないです』 というようなやり取りがあってだな……要するに、負けました。もう完敗。負け惜しみも湧いてこないぜ。 そんでキョウが優勝、景品かっさらって撤収しようと思ったがそうはならなかった。 というのもあのトーナメント、景品はなかったのである。代わりにチャンピオンには、次々とやってくるチャレンジャー達を相手に何連勝できるか腕試しという暑苦しい特典が与えられた。久しぶりにキョウの嫌そうな顔を見た。 そんなわけで、俺はキョウと別れて一人で大通りをぶらついている。腕ずもう観戦は三回キョウが圧勝するの見てたら飽きちゃったんだよな。 「さてさて、何か面白そうなものはっと」 「あー! スイだー!」 背後から聞き覚えのある声、次いで声の主そのものが飛んできた。 「ぐおっ!」 抱きつく、というよりほとんど体当たりのようにして何かが背中に張り付く。手を後ろに回して引き剥がすと、やはりというか何というか、バートと同い年くらいの少女ーーアイラが摂氏五百度くらいの笑顔を浮かべていた。 「ねースイ! 一緒に遊ぼ!」 「一緒にって……お前、連れとかいねーの?」 暗にそいつと遊べよ、と含ませて告げるが、アイラが頬を膨らませて言うことにはバートと一緒に来てすぐにはぐれてしまったそうだ。 つまり今は一人。話し相手もおらず暇をしていたらしい。 ま、いいか。俺も話し相手が欲しかったところだし。しかもアイラは耳寄りな情報を持っていた。 「なんかね、向こうでのど自慢大会やるんだって! 行こーよスイ!」 「のど自慢大会か……いいね、いっちょ行くか!」 二つ返事で快諾してやると、またアイラはにぱー!っと笑った。にしても、本当に楽しそうに笑うよなこいつ。何となく思い立って頭を撫でてやると、アイラは気持ち良さそうに目を細めた。
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