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まさかーー
ーーまさか、のど自慢大会の主催者が数日前に女物の服を譲ってもらった店の主人だとは思わなかった。
出会い頭に『どーしてあげた服着てくれてないの!?』と絡まれたときには何事かと思ったわ。着るかっつーの。
大会については何でもいいから歌え、と言われたのでとりあえず歌ってきた。参加人数百人にはビビったが超絶音痴のアイラを筆頭に並み居る参加者達を蹴散らして首尾よく優勝。
『はいこれ景品! 今度はちゃんと着けてきてね! 絶対だよ!』
と主催者から手に握らされたのは明らかに女物のネックレスだった。絶対に着けてやらない。
その後通りかかったアイラのお父さんにアイラを返し、『ミールウス最強の男』というハチマキを不本意そうに眺めつつ未だに腕相撲用の台についていたキョウと合流。
完全にはぐれてしまったラオ達をさがして目撃証言をたどり裏路地の酒場へと到着し、
「あ、ス、スイさん! どうしたんですか!?」
「それはこっちの台詞だーー!!」
シャリルの足元に転がる五人の男達を指差して全力で突っ込んだ。
何!? 俺たちと分かれてから一体こいつらに何があったんた!? 何があったらこんな状況が出来上がるんだ!?
「……ふむ、俺には街のゴロツキがシャリルに挑み、粉砕され、無慈悲に捨て置かれたように見えるが……」
「粉砕なんかしてません! ちょっと、ラオさんからも何か言ってください!」
「落ち着きなさいって。いや、正直見てたアタシも半信半疑なんだけどーー」
~ラオ説明中~
「すると、なに。ナンパしてきたゴロツキと飲み比べ勝負をして、シャリルが圧勝したわけ?」
マジで?
マジよ、と深刻な表情でラオが頷く。よくよく見れば照れ照れと頬をかくシャリルの足元には一升瓶がごろごろと転がっていた。……あれ全部ひとりで呑んだの? とんでもないザルっぷりだな。
「い、いいじゃないですか。私がお酒好きだったって」
「ん? いや別に悪くはないだろ。意外だとは思うけどな。あとここに来てからずっと酒臭いと思ってたら匂いの元お前か」
「私お酒臭くなんかないですよ!? そうですよねラオさんーーってどうして目をそらすんですか!?」
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