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「おいキョウ、いっそシャリルにばっさり『酒臭い』って言ってやれよ」
「無茶を言うな。いくら本当のことでも言っていいことと悪いことがある」
「キョウさんまで!? え、わ、私そんなに臭いますか!?」
「落ちつけ、ジョークだジョーク」
「やめて下さいよもう……」
疲れたようにシャリルがため息をつく。何か悩みでもあるんだろうか。あんまり興味ないけど。
「で、アンタらは何してたの?」
こちらは酒が入っていないのか、いつも通りな様子のラオが水を向けてくる。けど、何してたかって言われてもなぁ……
「屋台で遊んでたよ。的当てに行って一回で全部の的を落としたり、射的で景品全部の撃ち落としたりーーおい、何だその『やっぱりお前らか……』みたいな顔は」
ラオとシャリルは嫌な予感が当たったとでも言いたげな表情をしていた。俺たちがいないところで何かあったのだろうか。
「あとは腕ずもう大会にも出たな」
そう言ってキョウが手に持っていたハチマキを掲げる。
「へぇ~、腕ずもう大会ですか。誰が優勝したんですか?」
「無論俺だ。相手になるやつが一人もいなくてな」
「キョウさん力持ちですもんね。確かに、いい勝負ができるような人はいなさそうです」
「シャリル。その辺にしといてあげなさい。そこに傷ついてるやつがいるから」
「え? ーーあっ! ごめんなさいスイさん!今のはそういうわけじゃなくてですね、別にスイさんではキョウさんの相手にならないと言いたかったわけじゃないんです!」
「ええい止めろ! 前から思ってたけどお前のフォローは俺にダメージしか与えてこない!」
まぁ、負けたんですけどね。完膚なきまでに負けたんだけど、あらためて言われると悲しくなる。これでも鍛えてるんだけどなぁ……
「そういえば、お前は俺と分かれた後何をしていたんだ?」
「ん? あぁ、そうそう。あの後アイラと会って、一緒にのど自慢大会出てきた。これ優勝賞品な」
そう言って、銀細工のネックレスを見せびらかす。シャリルがおおーと小さな歓声をあげた。
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