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「綺麗……スイさんには似合いそうですね」
ここで『これは女物なんだよ』とは意地にかけて言いたくない。
俺はしきりに覗き込んでくるシャリルから遠ざけるように、チェーン部分に指を引っ掛けてくるりと回した。
「ま、まぁ空飛ぶときに邪魔だから着けれないんだけどな。俺は」
決して似合ってしまったらまた心に傷を負うからなんて理由ではない。ともあれ、いかに綺麗だろうと高価だろうと俺にこれはいらんなぁ。
そう考えていると、キョウがこんな提案をしてきた。
「なら、ラオにでもやるといい。もともとお前はこの旅にラオを引っ張り出した借りもあることだしな」
「え? アタシ?」
我関せずと言わんばかりにぼうっとしていたラオが、すっとんきょうな声で聞き返す。俺もだいたい似たような気持ちだ。あげるなら、さっき興味を示したシャリルの方がよくないか。
そう思ってキョウの顔を見ると、やつが口の動きだけでこう言ってきた。
『シ・タ・ガ・エ』
怖すぎる。が、ふと思い当たることがあった。腕ずもうの罰ゲームだ。
……まぁ、これくらいならやってもいいか。ネックレスは別に欲しいもんでもないし、ここで罰ゲームを拒否して『なら変更だ。今度は女性用の下着を』なんてことになったら今度こそ俺は社会的に死ぬだろうし。
「俺はいいよ。ラオ、こういうの嫌いだったりする?」
「え、いやそんなことはないけど……」
「んじゃやる。はーー」
「ーーまぁ待てスイ」
ネックレスをラオに向かって放り投げようとしたら、キョウが腕を掴んで止めてきた。
「……何だよ」
まだ何かあるのか? と言外に込めて聞くまでもなかった。なければ動作を止めたりしない。
「シャリル、この手のアクセサリーは一人で着けるのは少々難しいと思うのだが……」
「え? ……そうですね、私もあんまり着けないからよくわかりませんけど、確かに慣れてないと難しいかもしれません」
「というわけだ。スイ、お前がラオに着けてやれ」
「ちょ、キョウ!?」
なぜかラオが慌てていた。俺としては別にいいけど、
「ぶっちゃけ面倒く」
『シ・タ・ガ・エ』
「喜んでやらせていただきます。いいよなラオ?」
「ちょ、ちょっとスイ、本気?」
超本気だよ。なんかさっきからキョウが怖い。何だってんだ。
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