560人が本棚に入れています
本棚に追加
「何そんなに嫌がってんだよ、大したことでもないだろ」
言って、留め具を外したネックレスをラオの首の後ろに回す。こんなん慣れなんかなくても何とか……
「あれ、意外と、難しい……」
「ちょ、ちょっと待ってスイ、近い! 息近いって……」
「しょうがないだろ。ちょっと我慢してくれ」
「うぅ……は、早くしなさいよ……」
ラオの吐息が耳にかかるのをこそばゆく思いながらもカチャカチャと留め具を擦り合わせる。ほとんどラオの髪に顔を埋めるようにしてそれをしばらく繰り返していると、やがて気持ちのいい音がしてネックレスがつながった。
「よし、できた」
「わぁ! ラオさんすっごく綺麗ですよ!」
「あぁ。よく似合っているな」
「そ、そう? ……ありがと」
褒められるのが嬉しいのか、ラオは顔をうっすら赤くしていた。うん、確かに俺から見てもよく似合ってる。馬子にも衣装ってやつだな。
そんなガラにもないことを考えていたせいだろうか。
俺はここで言わなくてもいいことを口に出してしまった。
「そういや昔から思ってたことがあるんだけどさ」
「な、なによ改まって」
これ本当に言わなきゃよかったと後で後悔する羽目になるのだが、この時の俺はどうかしていた。
「ラオって凄え良い匂いするよな」
全世界が凍りついたかと思った。
のは俺とラオだけで、キョウは噴き出しそうに小刻みに震え、シャリルは片手で口元を抑えてドン引きしていた。
しばらく硬直していたラオはというと、いきなり物凄いスピードで顔を真っ赤に染めた。あはは、リンゴみたいだ。
「死ね変態!」
「うわっとぉー!? ごめん! 今のはごめん! 俺が悪かった! 謝るから、謝るからそのスパナをしまえ!」
本当に危ないから!
「い、今のはちょっとどうかと思います……」
「忘れて! 今の発言は即刻忘れてくれ!」
「いやいや、シャリル。そう言ってやるな。あれがスイの本当の姿なんだ。否定しないでやってくれ」
「キョウ! お前は俺を『女の子の匂いが食うよりも寝るよりも好き』みたいな人格に貶めようとしてるな!? その恐ろしい企みを早く捨てやがれ!」
最初のコメントを投稿しよう!