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「あー疲れた。久々だぜこんな走ったの」
「確かにな。村を出てから最長じゃないか?」
「げっほげほげほっ! な、何でアンタらそんな余裕なのよ……っ!」
いい汗かいたと爽やかな気分に浸る俺たちの隣では、ほとんど涙目になりながらラオが咳き込んでいた。
まんまと逃げおおせた俺たちは、広場のようなところで(主にラオの)乱れた息を整えているところだった。
シャリルはさっきから食い逃げしたという罪悪感で小さくなっている。ちらっとそっちを見ると、
「……いえ、これは仕方ないですよ。あの男のひとたちが払ってくれるって言ってたのにお勘定せず逃げちゃったのが悪いんです。うん、そうです。仕方ないですよ。私悪くないです」
お、シャリルなりに自己完結できたみたいだ。ようやく視線を上げて俺たちを見てくる。
「そういえば、エスちゃんはどこに行ったんでしょうか?」
「エスカ? あ、そういえばいねーな。俺たちと一緒ではなかったけど……」
と、ここでラオが『アタシ知ってるわよ』とジェスチャーで伝えてきた。まともに喋れないほど息が上がってるのかお前は。走ったのはせいぜい百メートルくらいだというのに。
で、ラオの息が整うのを待って話をきけば、聞いていた側の全員がなんとも複雑な表情になった。
「タヌキの姿のままナンバして、振られまくって、ようやく一人捕まえたと思ったらまさか食材として見られてたとか……」
「……さすがの俺でも同情するぞそれは」
「エスちゃん……大丈夫でしょうか?」
俺はシャリルの肩にポンと手を置き、すっかり夜に染まった空を仰いだ。
「ほら、見てみろよシャリル。あそこに輝くエスカの星を」
「ええっ!? エスちゃんとの別離をあっさり受け入れた!?」
「アタシにも見えるわ。あそこにあるのはエロクレタヌキ座ね」
「惜しいやつを亡くしたものだ」
「ラオさんとキョウさんまで! 皆さん諦めるの早すぎませんか!?」
「ホンマやで。僕ちょおショックやわぁ」
後ろから聞こえてきた声にキョウを除く全員が飛び上がった。
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