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「何で生きてんだお前!」
「まるで僕が死んでなきゃおかしいとでも言いたげやんかスイはん。命からがら逃げてきた仲間にその扱いどうなんよ」
ジト目で見てくる。いや、だってもうどっかの誰かの胃袋で永眠してると思ってたから……
「無事でよかったですよ。どこか痛いところとかないですか?」
「……うん。せやね。僕は何事もなかったで。僕は」
やたらと『自分は』と強調しているのが気になる。一体連れて行かれた先で何があったんだろう。
「まぁそう落ち込むな、エスカ。あの通りラオだってお前が帰ってきて嬉しがっているんだから、お前も喜んだらどうだ?」
「えっ!? そんな、オネェサン僕のことが心配すぎて夜も眠れないほどやったって!? 安心してやオネェサン! 僕はここにおるで! ただいまのハグをプリーズミーッ!!」
「手が滑ったわ(ドゴッ)」
「ぎゃん!」
ラオの胸に飛び込もうとしたエスカは、虚空から現れたスパナにはたき落とされて石畳に転がった。
容赦ねーなラオ。奇跡の生還を果たした仲間にこの仕打ちだよ。俺はピクリとも動かなくなったエスカから視線を空に移した。
「あ、あんなところにエスカが……」
「なぜ星を見ながら言うんですかスイさん。いつまでそのネタ引っ張るんですか」
ため息交じりにシャリルも再び空を見る。
その時、俺は不可侵の夜空を何かがよぎるのをとらえた。地上から飛び上がり、どんどん昇って。
そして、それは夜空で弾けた。
「な、何ですか? あれ……」
俺たちの視線の先では、大量の光の花が咲いていた。低い破裂音を響かせながら、いくつも、いくつも。
キョウがぽつりと言う。
「……花火か。久しぶりに見たな」
「花火……」
「シャリル、もしかして花火を見るのは初めてかしら?」
食い入るように夜空を見上げるシャリルに、苦笑しながらラオが聞いた。
「……はい。あれ、花火って言うんですか……。綺麗ですね」
そんなシャリルのうっとりしたような声を聞きつつ、俺は両手で口を両手で囲み、法螺貝を吹くような形を作る。隣ではいつの間に復活したのか、エスカが同じことをしていた。
何とはなしに目で合図。タイミングを揃えて、せぇ……のっ。
「あれ? スイさん、エスちゃんも何をーー」
「「ーーたーまやぁぁあああっ!!!!」」
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