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「すっごく珍しいです! あんまり見られないものだから、『青龍を見たものには幸福が訪れる』なんて言い伝えのある地域もあるくらいですよ。まさかそれを私が見られるなんて思いませんでした……」
無邪気に喜びながら手を合わせるシャリルの周りでエスカはうんうんと頷き、ラオ状況について行けていなさそうな顔ながら物珍しそうに帯改め青龍を見ていた。
「これで私たち、幸せになれちゃいますよ! 早起きは三文の得って本当だったんですね~」
「ホンマやなぁ。これは幸先ええで」
「あれがそんなに凄いものなんて….…」
三者三様にそんなことを言って盛り上がっている。うん、楽しそうで何よりだ。
一方俺とキョウはというとーー
「ーーじゃ、ちょっと行ってくるわ。『風切り靴』なら多分近くまで行けるだろうし。キョウは何か聞いてきて欲しいこととかある?」
「全てだ。あの神獣の生態成り立ち能力すべてに興味がある。搾れるだけ情報を搾り取ってこい」
俺とキョウは感動以前の興味が強すぎてそれどころじゃなかった。伝説的神獣? 見たら幸福になる言い伝え? そんな大層なもの、地べたからただ見上げてるだけなんてつまんねーだろ。飛んで直接会いに行ってやる。
「ん。りょーかい。そっちの三人は何かある?」
視線を向けると、三人は揃って呆れたように笑った。
「神をも恐れぬとはこのことや」
「本当、アンタらって……」
「いつも楽しそうですよね」
何を今さら。俺とキョウは肩をすくめてその言葉の代わりにした。
「じゃ、行ってくるわ。追いつけなくなったら元も子もない」
そう言って、俺は『風切り靴』に上昇を命じる。
こちらを見上げるキョウ達は、すぐに小さくなった。が、不思議なことに依然として青龍は近づいたように感じない。
どんな高さを飛んでいるんだ、あいつ。さらに速度をあげ、俺は大空をどんどん上っていく。視界の端では景色が流れて、すでに俺は山の天辺よりも高いところに来ていた。
けどまだ目標は遠い。俺は躍起になって飛んだ。めっきり冷たくなった空気を、風を切って。高く、高く。
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