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ヒイッ! やっぱり怒ってらっしゃる! 表情がものっそい不機嫌顔なんだけど……。
「やっぱ俺のせい?」
「当たり前よ。もとはと言えば、アンタが二年前にーー」
ラオが気だるげな瞳に、確かな怒りを灯しながら言う。
覚えているだろうか。
『あ、で、でも、お母さん』
『まぁ、お義母さんだなんて……はいはい、何ですか?』
『やっぱりラオを連れていくには、お父さんにご挨拶をしないと……』」
『あ、そ、そうね!いつが良いかしら?』
『すみませんが、俺はこれから二年後に備えて修行に励もうと思いますので、多分しばらく後になるかと』
二年前、『ミッション』を思い付いたあの日、ラオのお母さんと繰り広げたこのやり取りを。
行ってきたんですよ。一週間ほど前に、ラオの家に。
あの日、ラオに呼ばれていた俺は、単身ラオの家に向かった。
戸をノックして、出てきたのは正装したラオのお父さん。『……貴様がスイ・ハーフェルか?』と訊いてくるときの威圧感や、眼力だけで殺されるレベルの熱い視線が印象的だった。
度肝を抜かれた。
なぜ俺は、まるで大切に守ってきた何かを奪いに来た盗賊を見るような表情で出迎えられたのかと。
で、家に入れてもらうだろ?
居間に通されるだろ?
お母さんはおろか、引きこもりを信条とするラオまですっげぇ嫌そうな顔しながらテーブルについてるだろ?
『貴様が我が愛しのラオと結婚するなど、俺は認めん……認めんが、今この場で我が愛しのラオにその身を生涯捧げると言うのなら、俺も、俺も……やっぱり認めたくないいぃぃ!』
それまで厳しい雰囲気を保っていたラオのお父さんがシャウトした辺りで、あ、これ夢かな? って思った。
ところが夢じゃない。
で、ラオが面倒くさそうにお父さんをなだめている間お母さんと話し合い、死ぬほどびっくりした。
何ですか結婚て? 誰と誰が? 俺とラオが!? 何じゃそりゃ!
って叫んだ瞬間、愛娘にあやされて冷静さを取り戻しつつあったお父さんが噴火。
『よくも我が愛しのラオをたぶらかしたなァァ!!』
って台詞とともに農作業で磨かれた水魔法を発射された。避け損ねた俺は高圧水流によって壁をぶち抜いて外に叩き出され、『二度と我が愛しのラオに近づくな!』と命じられたのである。
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