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「よろしくお願いします。護衛をさせて頂く前に、私どもからも二つだけ、質問させて頂いてもよいでしょうか。まず、なぜ護衛を私、ニャンゴを指定したのかということ。そして、どうして私がアインス=リヒトにいるとわかったのか、ということです」
普段は無表情な顔に、にっこりと営業スマイルを浮かべつつも、ニャンゴは大富豪のヤシュムの前であからさまに態度を変えることはない。
いつものように、冷静に淡々と、言葉をにごさずきっぱり用件を伝える。
「うっふふ、いいわねぇ。はっきりモノを言う人は、嫌いじゃないわ。質問にお答えしましょう。まず、なぜあなたを指定したか」
そう言ってヤシュムはつかつかと自分の船と波止場をつなぐ渡し板まで歩いていくと、船の中に向かってちょんちょん、と手招きをした。
すると船室から、少年が一人、恥ずかしそうに顔を伏せて出てきた。薔薇のように頬を赤く染めた少年は、ヤシュムに促されるがままにおずおずと板を渡り、ヤシュムの後ろにぴったりとつく。
「紹介するわね。この子はルゥルゥ。私についてる小姓なの。カワイイでしょお? この子、猫が大好きなのよ。ねー、ルゥルゥ?」
大きな手でヤシュムが頭を撫でると、ルゥルゥは赤い頬をさらに赤く染めてヤシュムの腰の後ろへ顔を隠してしまった。
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