一方的な思いは、しばしば拒まれる

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 勢いよく放たれた扉から、一人の男が受付に転がりこんできた。 「すみません! こちらのギルドに、ニャンゴという方は登録していますか?」  はあはあ、と息を切らしながら、必死の形相で叫ぶ男。  黒の中にところどころ白が混じる髪と、同じように白がまじったひげが耳元からあごにかけてもしゃもしゃと覆っている。  たれ気味の目尻には、ニャンゴよりも深いしわが刻まれていた。  ニャンゴはガヤルドの背後から、薄目の視線でひげ男の様子を追う。  ミトンの受付嬢は何やら起きそうな予感を感じてか、ウキウキ感満載で答える。 「えーと、ニャンゴさんならたった今、我がアインス=リヒトのギルドメンバーになりましたー!」  受付嬢が言い終わらないうちに、ヒゲ男はずんずんと受付まで大股で近寄ってくる。 「ニャンゴさん、お願いがあります。今日の夕刻、港からこのギルドまで、私の主人の護衛をしてください。急なことは承知の上です。その分報酬は多く出しますから、お願いします!」  そう言ってヒゲ男が深々と頭を下げ、ハッシと両手でにぎりしめたのは、すべすべ褐色肌のニャンゴの手……ではなく、もさもさ黒毛におおわれたガヤルドの手だった。
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