一方的な思いは、しばしば拒まれる

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「いや、俺は……」  人違いだと言おうとしたガヤルドの大きな手を、ヒゲ男は肉球もろともぎゅむっと両手でにぎりしめた。そのまま、ヒゲ男は困惑するガヤルドに何度も「お願いします!」と頭を下げ続けた。  受付嬢との楽しいお茶タイムのためにも、ヒゲ男の依頼はぜひともご遠慮願いたい。  ガヤルドはできるだけやんわりと、ヒゲ男に断りを入れた。 「あー、いや。実は俺たちは、昨日ポートフォリオに着いたばかりでさ。この街のことには全然詳しくないぜ? 護衛なら新人の俺たちよりも、もっとこの街をよく知っている他のメンバーに依頼したほうがいいんじゃないのかなー?」  背後のニャンゴには、確認はとらない。  今日は仕事なしになりそうなところ、せっかく舞い込んだ依頼である。確認をとれば、ニャンゴは確実に受けるはずだ。  だから、いわばお断りは、ニャンゴとのスピード勝負。  すかさず先手を打った自分に、ガヤルドは我ながら内心ニヤリとした。  だが、ヒゲ男はあきらめられない! とばかりに、ぶんぶんと力強く首をふった。 「どうしてもニャンゴさんでないと、ダメなんです。主人は、そう申しています。あの方は、一度言い出したら聞かないお方なのです。どうかどうか、この通りです!」  言うなり、ヒゲ男はガヤルドの手を再び強くにぎり直すと、タンっと片方のひざを床につけ、下から見上げた。じっと見つめるヒゲのうるんだ目は、まるで神を拝むよう。
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