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「なあ、質問していいか?」
ひそひそと声をひそめ、ガヤルドは隣を歩く男に顔を寄せた。
もふもふとした黒毛の中に埋め込まれた、黄色のガラス玉のような瞳。耳打ちをしながら、大きな二つの瞳がすっと細くなる。
頭から生えた大ぶりの耳がぴくぴくと前後に動くときは、この肉食系獣人が背後に警戒していることを示している。
明け方の爽やかな太陽光が、港町ポートフォリオの通りに振りそそぐ。港から続く美しい石畳を歩くのは、獣人ガヤルドと人間族の男の二人だけ。
男の方も背丈はそれなりにあるはずだが、獣の中でも大柄のガヤルドの隣では小さく見えてしまう。
ガヤルドは、上半身には灰色のジャケットだけをひっかけ、枯草色をした薄手のパンツ姿。
それとは対照的に、人間の方はくるぶしまであるブーツに暗めの緑ズボンのすそをきっちりと入れ、膝まで丈のある濃い栗色のコートは襟までぴんと立てている。
長い髪を肩のあたりで一つに結い、深いしわを刻んだ目尻まで伸びた前髪が揺れる。
男は、ガヤルドの最初の問いに全く答える様子はない。
ただ、淡々と目的地に向けて歩を進めるのみだ。
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