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突如訪れた、緊迫の時。
低くドスのきいた声が、狭い部屋にずしりと響く。
「道楽息子でも、さすがにただでは帰れないと察したか?」
その主は、さっきまでヤシュムたちがいた、そして、再びトゥオーノが手洗いへと消えた奥の部屋からのっそりと現れた。
貫禄のあるでっぷりとした腹と、大ぶりのサングラス。耳下あたりからたわんだあごの先までざっくりと刻まれた古傷が何よりも印象的なこの男は、どうもギルドのボスらしい。
トゥオーノが一人でデカ覆面に連れ出されてから、ガヤルドは何となく嫌な予感はしていた。
そして、こういう嫌な予感ほど、なぜかよく当たる。
ガヤルド自称の、野生の勘、である。
どうやら今回は、これまでの中でも最悪の予感が的中してしまったらしい。
ガヤルドは、そばにいたルゥルゥの体をそっと抱き寄せ、黙って状況を見守る。
やはり、先ほどの銃声は、トゥオーノを撃ったものだったのだろうか。
キモいにまにま優男ではあったが、なかなか骨のあるヤツだと見直し始めていた矢先に、こんな形であっさりと別れることになるとは……。
ガヤルドの胸が、バクバクと震えた。
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