たった一人の兄貴

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気がついたら病院から兄貴の部屋にいた。 兄貴の香水やポスター、写真等が飾られた普通の部屋だ。 机からベッドへ手を擦りながら一つずつ丁寧に触れて行く。 赤い俺の長い髪が空を舞った。 それから衝撃が来て殴られたんだと気づく。 「この部屋にどうやって入った!」 男の声が響く。 俺は数年間使おうとも使いたいとも思わなかった言葉を久しぶりに出した。 「……兄貴の代わりに俺が死ねば良かったのか……?」 男はピクリと反応した。 部屋に流れていた沈黙が再び訪れる。
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