責任

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美杏と心が繋がった週明け。 会社のエントランスを抜けて エレベーターを待っていると 俺の隣に吉野が並んだ。 「先輩おはようございます」 とびきりの笑顔で言った吉野に 申し訳ない気持ちを抱えつつも 何事もなかったかのように 俺も答える。 「おう、おはよう」 エレベーターの扉が開いて よその課の社員で 溢れかえる箱の中、 自然に吉野と俺は 隅っこに追いやられた。 と、その時隣の吉野が 今にも泣きそうな顔で 俺を見上げる。 「…どないしたん?」 「…いえ…何でもありません」 そう言いながらも 小さく震え出す吉野の様子に 違和感を感じた。 何も言わずにじっとしたまま 吉野は真っ直ぐ前を見て ただ唇を噛みしめていて。 途中の階でエレベーターが止まると 乗り込んでいたメンバーは 俺と吉野だけを残して ゾロゾロと降りて行く。 …販売促進部の連中やったか。 そう思いながら全員が降りた ドアの閉ボタンを押した。 が、しかし。 扉が閉まった途端、 壁にもたれかかったまま 吉野はその場所に ズルズルと座り込んで行く。
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