責任

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「…それは違うやろ。 東雲部長は前島チーフがおるから… それに吉野のために 言ってくれたんやと 俺は思うで?」 「もういいんです。 だけど東雲部長にだけは 頼りたくないんです。 …先輩…心配して下さって ありがとうございます。 でも私は大丈夫ですから。 香港の彼女さんを一番に 考えてあげなきゃ ダメじゃないですか」 笑いながらそう言って 吉野は缶コーヒーを飲み干すと 「ごちそうさまでした」 そう小さく呟いて、 オフィスへと向かって行った。 けれどその背中はやっぱり どこか怯えているように見えて。 あんな形で吉野を 傷つけてしまった俺が 彼女のために出来る事は 何かないんやろか…。 そんな事を思いながら 俺も缶コーヒーを飲み干した。 オフィスに入って行くと 早速吉野は東雲部長に 呼び出されて… 何やら発注書の記載内容が 間違っていたらしく注意されていて。 ガックリと肩を落として デスクに戻った吉野の姿に チクチクと胸が痛くなる。 あかんがな。 気にしすぎやろ俺。 美杏がおるのに、 必要以上に吉野と接したらあかん。 そう何度も言い聞かせてみても やっぱり吉野のセクハラの話は 見て見ぬふりなんて 俺には出来へんかったんや。
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