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『セクハラされるのは
本当に辛くて怖くて…
その気持ちは分かるけど、
橋本は関係ないのに
首を突っ込むべきじゃないよ』
「そらそうやけど…
後輩が困っとんのに俺…
見て見ぬふりなんて
出来へんから」
『橋本の気持ちも分かるけど
それはやっぱり間違ってる』
引かない美杏に、
小さくため息を吐く。
せやかて俺と吉野の間に
起きてた事だけは、
東雲部長とも約束したし
絶対に言えへん。
どうしていいものか
黙ったまま考えていると
電話の向こうで美杏が言った。
『橋本には、分からないでしょ』
「何がやねん」
『セクハラされる人の気持ち』
なんかその言い方が
無性にムカついた。
「そんなん分からへん。
俺はセクハラされた事ないしな。
せやけど美杏やって
今の吉野がどんだけビビっとるか
分からへんやろが。
後輩を助けてやりたいと思うんが
そんないけない事なんか?」
『……っ……』
電話の向こうで
言葉に詰まった美杏に
もう一度ため息を吐き出して。
「すまんな、美杏。
そろそろ相手の男が来るで。
話して来るわ。
帰ったらまた連絡する」
一方的にそう告げて電話を切った。
俺の言葉が、またどれほど
美杏を傷つけていたのかなんて
気付く事もないままに。
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