責任

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店の中に戻って、 吉野の座っている ひとつ手前のボックス席に 俺は背中を向けて座る。 倉本が俺も一緒だと気づいて 逃げ出さへんように、 ヤツが吉野の席に来るまでは とりあえずここで待機。 それから5分もしないうちに ノコノコとやって来た倉本は 俺の存在に気付く事無く 吉野の向かいに腰かけた。 「話って何?」 余裕げにそう言った 倉本の声と同時に 俺は立ち上がり、 そのまま倉本の隣の席へと 強引に座り込んだ。 「はっ?橋本? な…なんだよお前」 慌てふためく倉本に、 満面の笑みを見せてから 俺は言葉を吐き出す。 「倉本、お前何やっとんねん。 俺の可愛い後輩に セクハラしとるんやってな」 「な…何の事だよ?」 「とぼけんなや。 全部吉野から聞いとるで。 セクハラ対策室に訴えたら お前、ソッコーで左遷やで? 左遷されたくないんやったら 今すぐここで吉野の写真、 削除しいや」 俺の言葉に完全にビビっとる 倉本は瞳をキョロキョロさせて 吉野に視線を送る。 言うてやれ、吉野。 いつもの自信満々のお前らしく。 そう心で吉野にエールを 送りながら彼女に目配せした。  
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