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「せやけど最後までせんくても
吉野を本気で抱こうとしたんは
事実やし…
もう美杏に向ける顔なんて
あらへん…」
ポツリと呟いた俺に
東雲部長はフッと笑みを見せ
優しく頭をポンポンしてくれた。
「美杏はさ…
あんなに明るく振舞ってるけど
苦労してる子なんだよ。
香港に戻ったばかりの頃、
美杏の恋愛相談に乗ってた
時期があるんだけど
以前付き合ってた男から
DV受けたりしててさ…。
だから恋をしてしまう事に
恐怖心みたいなものを持っていて
自分のものにならない人の方が
逆に安心出来るから
そういう人ばかり好きに
なってしまうって言ってたよ」
東雲部長から初めて聞かされた
美杏の過去に俺は衝撃を受けた。
心にそんな傷を持ってる
美杏やのに…
俺はなんて事をしてまったんや…。
ますます落ち込む俺に
東雲部長は淡々と話を続ける。
「だけど小野部長の結婚式の日、
橋本が撮った写真の中の美杏は
本当に嬉しそうに笑っていて
あれを見た時に俺は思った。
ああ、美杏はこの笑顔の先に
いる人が好きなんだな…ってな。
俺が思うに、美杏の方が
先にお前の事を好きになって
いたんだと思うぞ」
…え?
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