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そんな俺の心の呟きを
全部分かってるのか
東雲部長はコクンとビールを
飲み込んでから、
ゆっくりと口を開く。
「カッコつける必要なんか
ねーんだよ。
ホントに惚れてる女になら
情けない自分を見せたっていいんだ。
お前がいなきゃダメだって
すがってでも自分のものにしろ。
少なくとも俺はそうして
香織を自分のものにしたぞ」
…意外やった。
いつも隙なんて全く見せない
東雲部長やのに…。
この人も必死になって
愛する女を自分のものに
するためにもがいて来たんや…。
そう思ったら、もやもやと
自分の中に渦巻いていた
思いがすーっと晴れて行くような
そんな感覚に包まれて行く。
「情けない東雲部長か…。
見てみたかったわ」
「お前には見せねーよ」
「なんやねんそれ」
クスクス笑った東雲部長に
俺も小さく笑った。
「まだ美杏泣いてるらしいから。
早く電話して言ってやれよ。
好きだって一言、
それだけでいいんだよ
男と女はな」
…やっぱしカッコええやん、
東雲部長。
そう思いつつ俺は頷いて
携帯のメモリーを開いた。
最近はスカイプばっかで
電話なんて掛けるのは
久々でやけに緊張すんのやけど。
大きく深呼吸を繰り返しながら
携帯を耳にあてた。
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