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プツッと音がして繋がった電話。
せやけど電話の向こうの美杏は
何も話す気配がない。
しばし続いた沈黙。
それでも俺は好きな女を
守るための一世一代の嘘を
吐き出した。
「美杏、すまん。
さっき言うたの、全部嘘や。
ホントはお前が今でも
小野部長が好きなんやないか
思って嫉妬して…
あんな事を言うたけど…
今、ひとりで家におるから」
『……ホントに……?』
「ああ、ホンマや。
それとな…
俺はお前が好きや。
めっちゃ好きや。
今すぐ抱きしめたいって
思うくらい…好きやで」
『……っ……』
「だからお前の気持ち、
聞かせて欲しいねん。
お前は俺の事、好きか?」
電話の向こうで泣いてる美杏。
その声に俺の胸が
痛くて苦しくてたまらなくなる。
今すぐそこに飛んで行って
抱きしめてあげられたら
ええのに。
真っ直ぐ見つめて
もう一度伝えてあげれたら
ええのに。
せやけど…
俺と美杏の間にある距離は
あの時より確実に
近くなったはずや。
そう信じて俺はもう一度
美杏に問いかけた。
「美杏…ホンマはお前も俺の事、
めっちゃ好きなんやろ?」
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