愛するがゆえの嘘

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しばしの沈黙の後。 ポツリと返って来た美杏の声。 『好きだよ…。 めっちゃ好き』 その言葉に一気に目頭が 熱くなって来た。 なぁおかん…。 男が泣いてもええのは 親が死んだ時と、 恩人が死んだ時と… …大切な人と 思いが伝わった時やったかいな? そんな事を思いながら 泣きそうなんを必死に堪えて。 「来月必ずお前に会いに行く。 一晩中寝かせへんから 覚悟しとけボケ」 その言葉に電話の向こうで 美杏はフッと笑って呟いた。 『…バカじゃないの?』 「バカやない。アホや」 そう言って、 向かいに座って微笑む 東雲部長を見つめると 部長は親指を立てながら ビールを飲み干していて。 「ほんなら… 家に帰ったらスカイプ繋ぎ。 お前の顔見ながら 何度でも言ったるから。 …めっちゃ好きやって」 『…うん…分かった』 「気ぃつけて帰り」 『うん』 静かに切れた電話を見つめて 俺は大きくため息。 「やれば出来る子だな、橋本は」 笑いながら言った東雲部長に 苦笑いしながら俺もビールを 口に運んだ瞬間。 「で? 吉野とどこまでヤッたんだ?」 再び盛大に俺がビールを 吹き出したのは言うまでもない。
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