第一章

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キャリアを積める程の学歴も優秀さも無い、今の私。 誰でも出来る事務の仕事だけど充実してるし、真面目に取り組んでいる。 けれど、やりがいが見出せているのかと尋ねられると、即答出来ない。 行き遅れのお局様として、会社のお荷物になってる、哀れな姿しか想像出来ない。 将来の夢も何も無く、漠然と生きている私は本当に魅力が無い。 “仕事で自分が必要とされてるか、疑問に思うんです” 何であんな事を坂井主任に聞いてしまったのだろう? 私は何て言って欲しかったの? “雨宮さんのような綺麗な人が労ってくれるだけで、俺達営業は助かるよ” 優しい笑顔に当たり障りの無い言葉。彼なりの気遣いなんだろう。 けれどその言葉に、彼の本質が見えた気がしないでも無かった。 条件が整ってる人なのに、私を躊躇させるのはそこなのだろうか。 自分であんな事を聞いておいて、こんな風に思うのもどうかと思うけど。私は大きなため息をついた。 ――その時だった。 「何でだよ!!!」 突然大きな男性の声が耳に響く。 人ごみの中、私とすれ違う人達も皆振り返ってみてる。 何だろう揉め事!? 好奇心から声がした方向に近寄っていった。 「……ごめん……なさい」 腕を掴まれていた女性はそう言うと、掴まれた手を振り払い駆け足でその場を去った。 私の方角に向かってきた彼女からは、甘い香水の香りがした。 ふわりとした髪を揺らしながら去る彼女は、“可憐”という言葉がピッタリな女性だった。 つい女性を目で追ってしまったけど男性はどうしたんだろう? 視線を戻した先のその姿に、私は目を見開いた。
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