1209人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと目覚めると時刻はもう7時を回っていた。彼の腕の中にすっぽりと包まれたまま、朝を迎えた。
モゾモゾと私が彼へ向き合うと、少し寝ぼけた彼と視線があった。
目を覚ます度に求められて、激しく乱れた自分を思うと何だか気恥ずかしかった。
「・・・おはよう桐生君」
「おはよ・・・名前、元に戻ってるし」
「ま、まだ慣れないんだもの」
どうも照れてしまって言えない私に“少しずつね”とキスを落としたかと思うと、彼はそのまま起き上がった。
思わず彼の腕を掴む。
「ん?」
「桐生君まさか、朝食準備とか思ってる?」
「当たり前だろ。昨日夜からお互い何も食べてないしな。腹減っただろ」
いや、そうだけど。桐生君って尽くしてくれるタイプなんだろうか。
女の私に何かさせる訳でもなく、当たり前のように自分で動こうとする。
「でも・・・もうちょっとこのままがいい」
小さな声で甘えると、彼は笑って再びベッドへ戻って抱き寄せてくれた。以前抱き合った時と違う、彼に甘えることが出来る。
結局そのまま暫く休んだ後、朝食やシャワーを済ませた。
ソファーで2人で寛ぎながら、昨日出来なかった話をした。
あの後菫さんとどうしたのかも説明してくれて、私はほっと胸を撫で下ろした。菫さんの事を思うと胸が痛まないわけでは無かったけれど、桐生君は絶対渡せない。
一方桐生君の方は、私のマンションに来た時に見た男性が弟だと知って、ガックリ肩を落としていた。
最初のコメントを投稿しよう!