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「マジかよ、相当落ち込んだのに。いや、良かったんだけど」
そう言って項垂れる彼は何だか可愛くて、私は甘えるように擦り寄った。
「転勤になって近くのマンションに住みだしたの。あの時は丁度不動産巡りに来ていて」
少しずつ少しずつ、行き違っていた想いを確かめ合う。
「じゃあ、俺だけだよな」
「私はずっとそうだよ。そんな誤解してると思わなかった・・・彼とかだったらどうするつもりだったの?」
「そんなもん、奪うに決まってるだろ」
怒ったように言う彼の即答に顔が緩んでしまう。
にやける顔を誤魔化すように入れておいた珈琲に手をつけていると、桐生君は思い出したように立ち上がって、近くに置いてあった紙袋を持ってきた。
そして私の目の前にその紙袋を突き出してきた。
「やるよ」
「え?」
私は彼からその紙袋を受取った。幾つかプレゼントらしきものと・・・何だろう、本?
私が覗き込んでいると、横に座った桐生君が説明しだした。
「まず、これが誕生日プレゼント。これとこれはホワイトデーな。本はおまけ」
「え・・・?誕生日って」
「あの日、本当はお祝いしてやるつもりで準備しといたんだ。1ヶ月も遅れて格好悪いけど。ホワイトデーも渡せなかったけど準備はしてたんだよ。この際だから受取って」
何故誕生日を知ってたかはわからないけれど、とにかく嬉しくて胸が熱くなった。
瞳を潤ませる私に気付いて“泣く前に開けろ”と突っ込まれてしまった。
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