1209人が本棚に入れています
本棚に追加
誕生日のプレゼントからガサガサ開けると、それは三日月のペンダントで。シンプルだけど物凄く綺麗だった。
ホワイトデーにはお揃いのブレスレットにクッキー。ここのブランドでプラチナにダイヤってそれなりにするような・・・。私チョコしかあげてないのに。
「一緒に飲んだ時に“月に関連するものに目がいく”って話てただろ?だから安易なんだけど。気に入らなかった?」
彼の言葉が終わると同時に、彼に飛びついた。気に入らないなんて、そんなわけない。嬉しくて結局私はまた泣いてしまった。
「有難う・・・気に入らないわけないよ、凄い嬉しい・・・大事にする」
どうしよう、きっと何かのモチーフの物なんて苦労したに違いない。何気なく言っただろう、その言葉を覚えててくれるなんて。
桐生君の誕生日っていつだろう?絶対私も負けない位、お祝いしたい。そしておまけだという本を私は手に取った。
「三島由紀夫だ。読んだ事無い・・・“春の雪”聞いた事はあるんだけど」
「映画にもなったしね。恋愛色強いから文体が苦手じゃなかったら、暇つぶしに読んだらいい。まぁあれだ。この際月に関連するものでと思いついて勢いで買ったから」
“春の雪”が月関連?頭をかしげた。
「ごめん、私どこが月関連なのかわかんなくて」
控えめに尋ねると“春の雪”の横の“豊饒の海(一)”というタイトルを指差した。
豊饒の海はシリーズで4巻まであるらしく、その一冊目が“春の雪”と教えてくれた。
「豊饒の海って月の海なんだよ。ま、わかんないよな。俺も思いつき過ぎたと反省してる」
「月の海って・・・なに?」
「月の影があるだろ?兎に見えるとかいうアレ。あれを昔の人は海だと思ってて、それぞれに名前がある。豊饒の海はその1つから来てる」
「・・・素敵だけど、わかる人少ないと思うよ、それ」
「だから反省してるって。馬鹿だと思うよ自分でも」
少し照れた桐生君が可愛くて、思いつきでも買ってくれた様子が嬉しくて。
私の方が気持ちが強すぎるかもなんて思ったけれど、ちゃんと好かれてると表現されたようで温かくなった。
2人で笑いあっていると、不意に桐生君が表情を変えた。
最初のコメントを投稿しよう!