終章

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誕生日のプレゼントからガサガサ開けると、それは三日月のペンダントで。シンプルだけど物凄く綺麗だった。 ホワイトデーにはお揃いのブレスレットにクッキー。ここのブランドでプラチナにダイヤってそれなりにするような・・・。私チョコしかあげてないのに。 「一緒に飲んだ時に“月に関連するものに目がいく”って話てただろ?だから安易なんだけど。気に入らなかった?」 彼の言葉が終わると同時に、彼に飛びついた。気に入らないなんて、そんなわけない。嬉しくて結局私はまた泣いてしまった。 「有難う・・・気に入らないわけないよ、凄い嬉しい・・・大事にする」 どうしよう、きっと何かのモチーフの物なんて苦労したに違いない。何気なく言っただろう、その言葉を覚えててくれるなんて。 桐生君の誕生日っていつだろう?絶対私も負けない位、お祝いしたい。そしておまけだという本を私は手に取った。 「三島由紀夫だ。読んだ事無い・・・“春の雪”聞いた事はあるんだけど」 「映画にもなったしね。恋愛色強いから文体が苦手じゃなかったら、暇つぶしに読んだらいい。まぁあれだ。この際月に関連するものでと思いついて勢いで買ったから」 “春の雪”が月関連?頭をかしげた。 「ごめん、私どこが月関連なのかわかんなくて」 控えめに尋ねると“春の雪”の横の“豊饒の海(一)”というタイトルを指差した。 豊饒の海はシリーズで4巻まであるらしく、その一冊目が“春の雪”と教えてくれた。 「豊饒の海って月の海なんだよ。ま、わかんないよな。俺も思いつき過ぎたと反省してる」 「月の海って・・・なに?」 「月の影があるだろ?兎に見えるとかいうアレ。あれを昔の人は海だと思ってて、それぞれに名前がある。豊饒の海はその1つから来てる」 「・・・素敵だけど、わかる人少ないと思うよ、それ」 「だから反省してるって。馬鹿だと思うよ自分でも」 少し照れた桐生君が可愛くて、思いつきでも買ってくれた様子が嬉しくて。 私の方が気持ちが強すぎるかもなんて思ったけれど、ちゃんと好かれてると表現されたようで温かくなった。 2人で笑いあっていると、不意に桐生君が表情を変えた。
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