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「少し真面目な話をしていい?」
「うん」
「美月も27だろ?俺も27だし。否応なしに結婚考えると思うけど、正直な所どうなの?」
その言葉にドキリとさせられた。やっとの思いで一緒になれたのに、曝け出すのは少し怖い気がした。
でもきっとこの年齢だから、今から2人で始めていくから桐生君は持ち出したんだと思った。
正直に言ってみよう。ちゃんと向かい合ってくれる人だから。
「私、将来に漠然と不安を抱えていたの。女だし、でもこの年齢になると周囲は結婚って言葉を出すでしょ?」
周囲の言葉に流されて結婚して・・・でも結婚というのはそんな簡単なものだろうか?
そう思うのに否応なく時は流れて適齢期というのは過ぎていく。
仕事でも一生をかけるようなものに巡り合っているわけじゃない。
これから自分はどうなっていくのか、未来の自分に不安だから結婚をしたいのか。
自分の環境を変える勇気もきっかけもないまま、流されていく不安で一杯だった。
「でも桐生君に会って、恋に落ちて私は変わったの」
生活が恋愛一色になってしまった。何も見えなくなっていた。
でも誰かの為に強い自分になりたいと、はじめて思えた気がする。
「結婚願望も子供が欲しいって気持ちも全く無かったの。でも桐生君が望むなら、きっと私もそれを望む」
男に流されるとかそういうんじゃない、2人でいる未来を自然と思い描くから。
一緒にいたい強い気持ちを持てる相手となら、私の価値観すら変えていく。
そしてその先にあるのはきっと、私の知らない幸せの形が存在すると思える。
「引いた?でもね、これが私の正直な気持ちそのままなの」
私がそう言うと、桐生君はゆっくり首を横に振った。
「そんな事はない。人との出会いで自分の何かが変わるなんて、当たり前にありえる事だし。
美月にとってその1人が俺だって言うなら、俺は素直に嬉しいよ」
桐生君は珈琲をひと口飲むと、自分の意見を語りだした。
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