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俺は直ぐ様、運転室を見に行く。
……もぬけの殻……
誰も居ない電車は勝手に動いていた。
電車の運転なんて解らないし、解ったところで無駄であろう。
しかも、此処は地下。
飛び降りるにしろ地上ならまだしも、こんな暗闇に飛び込んだら何があるか解らん。
只でさえ俺と智治は衰弱していると言うのに。
「どうしようもねえのかよ……」
「…………俺を見くびるなよ……こんなピンチ、今に始まった事じゃねえ。」
俺は左右の扉を無理矢理こじ開ける。
助かる方法は一つだけだ。
「メーターを見る限り電車は時速80㎞、今は真っ暗でも駅には明かりが灯っている筈だ。チャンスはイチドきりの一発勝負だが、飛び込むぞ?」
駅のホームに差し掛かかった瞬間に飛び込むしかないだろう。
普通の人間なら、こんな提案、却下だろうが、俺と今居るのは幼い頃からの友人だ。
智治は何も言わず頷いてくれた。
「〈結界〉を張り、最大限に防御を高める。俺から離れるなよ?智治!」
〈霊力〉も少なく、何の道具もないが、やるしかない。
俺達は死ぬわけには、いかないのだから。
うっすらと目の前に明かりが灯っている。
恐らく終点の駅であろう。
俺達は肩を組み、俺は〈結界〉の詠唱を始めた。
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