2008年9月某日 不明 終点

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電車が高速で駅に差し掛かる。 タイミングを外せば〈結界〉を張っていても只ではすまない。 「行くぞっ!!」 俺達は電車から飛び降りた。 何とか駅のホームへと辿り着き、数秒後には脱線か衝突したのであろう。 轟音と爆発音が聞こえてきた。 俺達は目の前の階段を上がり、上を目指す。 「エスカレーターも無いのかよ、上が暗くて見えないな……」 お互いの体を支えつつ、一歩一歩ゆっくりだが、登って行く。 暫く登ると僅かな明かりが見えた。 「智治……ここからが、本番だからな……気を抜くなよ……」 「おう!そんな事より大丈夫かよ?秀、顔色悪いぞ?そんな弱ってるお前なんか見た事ねえぞ?」 さっきの〈結界〉で〈霊力〉をだいぶ消費していた。 だけど何でだ? 俺と同じ様に消耗していた智治の〈生気〉が回復している。 「心配ない……。それより、急に元気になったな……?」 「さっきまで、滅茶苦茶ダルかったんだけどよ。この駅に着いてからかな?何ともなくなったんだよな。」 何故だ? 俺は精神体だから肉体を維持する為に〈霊力〉を常に消費している。 智治もまた、この世界で肉体を消滅させない為に、自然と〈生気〉を使っていた筈だ。 此処が現実世界なら智治が元気になった理由が解るが、それなら俺も目を覚まして戻れる筈だ。 俺が色々と考えていると、階段が終わり、大きな扉の前に出た。 『待っていましたよ~。此処が終点の処刑丘〈ゴルゴダ〉です~。中で待っていまので、早く来て下さいね~。』
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