2008年9月某日 不明  秋月

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〈春秋探偵事務所 午後11時〉 すっかり夜も更け、皆の顔には疲れが見える。 あの晩から一睡もしていないので当然か。 一向に目を覚まさない秀君。 秀君に〈霊力〉を分け与えた姫野さんは色々な所に連絡をしている。 恐らくは全国の姫野家の分家であろう。 先程、秀君の実家に秋津家の分家の手配を頼んでいた。 全国に散らばった友人達。 それを日本を代表する〈霊能者〉の秋津家と姫野家が総力を尽くしてくれている。 「ん~。終わった~。にゃ~。」 電話を終えた姫野さんが伸びをした。 相変わらずな猫みたいなアクビをしながら。 「さてと、ウサギちゃんと姫っち、それにトマト君は寝なさい。休まないと体、壊すよ~?」 「大丈夫よ。皆が大変なのに寝てなんていられない。」 確かに皆の生存は確認できたが、安否は不明だ。 それに、秀君までこんな状態の時に僕達だけ休んでなんていられない。 ……だけど…… 「……そうしよう。僕達まで倒れたら、目覚めた秀君に怒られる。後は姫野さんに任せよう。」 渋々僕の言うことを聞いてくれた麻美ちゃんと姫を連れて2階にあがる。 これで終わりじゃないんだ。 休めるときに休んで、いざと言うときに備えないと。 「二人っきりだからって秀人に変な事しないでよ!!」 最後まで姫野さんに対抗する麻美ちゃん。 姫野さんはタバコを吸いながら笑顔で手を振った。 「……愛されてるね~。後はあんた次第だよ、秀人……」
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