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「しっかし、美術館なんて高校の時に社会見学で来た以来だぜ。何が面白いのか俺にはさっぱり解らん。」
辺りを見渡しながら智治は思出話を始めた。
こいつ……と言うか、あの時確か絵里が珍しく怒ったんだ。
「お前達ふざけて絵里を怒らせたんだよな?普段は物静かの絵里が珍しくよ。んで、泣いた絵里を見て、チビ女に全員ボコボコにされてたな。」
「そうそう!あれだけ姫の怒った顔を見たのは、あれが最初で最後だからな~。麻美は何時もの事だけどよ。あの後、学校に帰ってから反省文書かされるしで散々だったぜ。」
「あの時よ、前日に音楽室で絵里が社会見学楽しみだって話してたからな。お前達の自業自得だな。」
「?なんで秀は音楽室に居たんだ?帰宅部だったよな?」
「ん?あの時は合唱部のコンクールが近くて俺は暇だったからよく見に行ってたんだ。顧問の三谷先生に頼まれてたんだよ。」
「三谷先生か、懐かしいな~。美人だったもんな~。」
俺達は懐かしい話に華を添えながら探索を続けた。
世界中の著名な作品に紛れて飾られる多数の桜を題材とした作品。
油絵、水彩画、浮世絵、様々な手法で描かれた絵の数々。
よく母親が桜が好きで春になると一緒に見た記憶が甦る。
「俺さ、桜を見ると秀の母さん思い出すんだよな。」
「名前が櫻子だしな。よく家で花見したもんな。」
「……来年さ……また、皆で花見しないか?秀の家の桜を見ながらよ……」
「……ああ。親父とお袋も喜ぶよ……」
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