2008年9月某日 不明 春桜

3/8
前へ
/62ページ
次へ
「しっかし、美術館なんて高校の時に社会見学で来た以来だぜ。何が面白いのか俺にはさっぱり解らん。」 辺りを見渡しながら智治は思出話を始めた。 こいつ……と言うか、あの時確か絵里が珍しく怒ったんだ。 「お前達ふざけて絵里を怒らせたんだよな?普段は物静かの絵里が珍しくよ。んで、泣いた絵里を見て、チビ女に全員ボコボコにされてたな。」 「そうそう!あれだけ姫の怒った顔を見たのは、あれが最初で最後だからな~。麻美は何時もの事だけどよ。あの後、学校に帰ってから反省文書かされるしで散々だったぜ。」 「あの時よ、前日に音楽室で絵里が社会見学楽しみだって話してたからな。お前達の自業自得だな。」 「?なんで秀は音楽室に居たんだ?帰宅部だったよな?」 「ん?あの時は合唱部のコンクールが近くて俺は暇だったからよく見に行ってたんだ。顧問の三谷先生に頼まれてたんだよ。」 「三谷先生か、懐かしいな~。美人だったもんな~。」 俺達は懐かしい話に華を添えながら探索を続けた。 世界中の著名な作品に紛れて飾られる多数の桜を題材とした作品。 油絵、水彩画、浮世絵、様々な手法で描かれた絵の数々。 よく母親が桜が好きで春になると一緒に見た記憶が甦る。 「俺さ、桜を見ると秀の母さん思い出すんだよな。」 「名前が櫻子だしな。よく家で花見したもんな。」 「……来年さ……また、皆で花見しないか?秀の家の桜を見ながらよ……」 「……ああ。親父とお袋も喜ぶよ……」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加