2008年9月某日 不明 夏星

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扉を開くと空一面を覆い尽くす満点の星空が広がっていた。 虫の鳴き声が夜を彩る。 「智治、タバコくれ……って、どうした?」 横を見ると智治がへばっていた。 「暑い~。何だよ、この暑さ。」 「今まで秋、春、冬と来たから夏なんだろ?野球選手がだらしないぞ?」 「バカやろ~。我慢出来るとか、出来ないのレベルじゃないぞ。」 精神体の俺では解りづらいが、相当暑いのだろう。 智治は汗だくで、苦悶の表情を浮かべている。 何処かで休ませたいが、見渡す限りの草原。 どうしたものか…… 『このまま、真っ直ぐ……』 頭の中に直接響く声…… この声、何処かで聞いた事が…… 考えてる余裕はないな、従ってみるか…… 俺は智治を支えながら声の通りに真っ直ぐ進む。 『……もうちょっとで、学校……』 まただ…… 声に敵意は無いから平気だろうが、一応用心しとかないとな。 暫く進と確かに学校らしき建物が見えた。 「此処は……」 間違いない。 俺達が肝試しに訪れた廃校だった。 だが、〈雲外鏡〉の力で破壊された筈だが…… とにかく智治を休ませよう。 俺は廃校の中へと足を運ぶ。 あの日の昇降口、此処までは皆、一緒だったのにの……
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