2008年9月某日 不明 夏星

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「なんだ?急に涼しくなった。」 智治が正気を取り戻したらしい。 「って、此処は……あの時の学校か!?何で!?戻って来たのか!?」 「残念だが、まだ夢の中だ。どうしてなのかは俺にも解らないが、一先ずこの中を探索してみよう。」 『此処にあるよ。探し物。奥……』 さっきから聞こえる声…… 成る程、また助けに来てくれたんだな。 「姿を見せろよ?こいつもお前の主人の友人だから害はないぞ?」 俺の声に反応したのか、暗闇の廊下から小さな影が近付いてくる。 「?人形?」 小さな市松人形。 そして絵里の大切な思い出の人形。 「また会ったな。すまないな。いつも助けてもらって。」 『お兄ちゃんはいつも絵里ちゃんを助けてくれるから。それに私の事も大事にしてくれる。』 「姫の人形……?どうしてだ?姫も此処に居るのか?」 『絵里ちゃんは現実世界に居るよ。私の本体もね。今の私はお兄ちゃんと同じような存在なの。』 「?さっぱり意味が解らない……」 「成る程な……俺は精神体だが、お前は魂なんだな?あの時、既に〈付喪神〉として現世に留まれなくなったお前は魂となった。しかし、あの廃校は元々〈ジョーカー〉の仕掛けた罠で、本体と分離したお前は此処に封じられる形になった……そんな所か?」 『そう。本当はもっと早く助けに行きたかったけど、今の私じゃ此処から出られないの。二人がこの空間に来てくれたお陰で、声だけは念じて届ける事が出来たの。』
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