2008年9月某日 不明 終点

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1号車の座席に座り、俺は智治に色々と説明する事にした。 「……って訳で俺も気付いたら、この変な世界に居たんだ。幾つか解った事は、この世界が誰かの夢の中である事、この世界で死んだら現実でも死ぬという事、此処に居るだけで〈霊力〉が減っているって事だな。」 「じゃあ俺も何処かで眠ってるって事か?あの廃校で変な鏡に吸い込まれてからの記憶がない。気付いたら変な駅に居て、体が勝手に動いてこの電車に乗り込んだんだ。」 おおよそは推測どうりだが、俺と智治は決定的な違いが存在する。 「俺の体は現実世界にある。つまりは、今の俺は精神体だが、お前は実体だよ。〈雲外鏡〉は内部に自身の空間を作り出す〈妖〉だ。お前が吸い込まれた先が、この世界に直接繋がっていたんだろう。」 俺は智治から貰ったタバコを吹かし、説明を続ける。 「現にお前が現実世界の〈物〉を持ち込んでいる事が何よりの証拠だ。じゃなきゃ、俺は自分のタバコを吸う。お前と一緒に肝試しを行った夢乃や他の奴等が何処に消えたかは解らんが、早く元の世界に戻らないとな。」 この世界で二時間程経っているが、時間軸が現実と同じとは限らない。 智治の〈生気〉はかなり低下しているし、俺の〈霊力〉も減る一方だ。 『大変長らくお待たせしました~。次は終点、処刑丘です~。この電車の乗務員は全て死んでしまったので電車は駅にぶつかります~。電車は止まりません~。』
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