沈黙

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 僕が彼女に勝てば、尻取りに拘る意味が判るが、逆に負ければ、其の意味は永久に謎のヴェールに包まれた儘と成ってしまうので、  今回限りは、  是が非でも、彼女に勝たなければ成らない。  尻取りに限らず、じゃんけんや、言い争いにさえ、僕は普段から彼女に負け続けて居ると言うのも在るが、  その度に、  私が女だからわざと負けたんでしょう? と言われ、言葉を失った僕は完全敗北してしまう。  とは言え、  決して躍起に成って居る訳では無いが、今回の勝負で尻取りは最後にしようと僕は思う。  然し、尻取りと言う物は不可視の戦場だ。同じ手段は二度通用せず、自分が仕掛けた地雷に足を乗せてしまう事だって在る。  相手の先を読みながら、如何に可能性を削って行くかが鍵と成り、物量勝負だけでは、勝利する事は出来ない。  加えて、僕自身は自分のみにたった一つの制約を課して居る為、  リスクは非常に高いけれど、麻雀にしろ、ポーカーにしろ、制約が厳しい役程、高得点を獲得出来ると言うのも、  勝負の共通の定石だ。
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