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沈んだ青い瞳
目覚めると、汚れでくすんでいる無機質な灰色の天井があった。
保健室か……。
加奈は再び目を閉じると、ベッドに仰向けのまま、暫くじっとしていた。
静か……先生いないのかな……。
しばらくして、廊下から生徒の声がざわざわと聞こえてきた。
もう下校時間か、だいぶ寝ていたんだ。帰らなきゃ。
加奈は目をあけ、ベッドから降りてみたが、すぐに頭がくらくらしてしまい、頭を抑えてその場にかがみ込んだ。
「ひどい貧血ね、家まで送ってあげるわ」
加奈は突然声をかけられ、驚いて顔をあげた。
自分の直ぐ横に見慣れない女生徒が心配そうな顔をして立っていた。
地味な黒縁の眼鏡をかけ、癖毛がかった長い黒髪は緩く後ろに束ねられている。
加奈は何故だか彼女から目が離せなかった。
肌がとても白く、彫りの深い顔立ちにすらりとした体型。
隣のクラスの子。誰かがハーフだと言っていたことを思い出した。
特に加奈が釘づけになったのは、眼鏡で隠されている、沈んだ青い瞳。
森羅シャナン?
声に出して名前を呼ぼうとしたが、思うように口が動かない。
この前会ったときよりかなり地味で、雰囲気が違うけれど、でも確かに、シャナンだ。
「三神さん、さあ帰りましょう」
彼女がそう言って加奈の手をとると、さっきまでの眩暈は嘘のように体が軽くなった。
シャナンの華奢でひんやりとした手に触れられた手のひらは、そこに心臓があるかのように脈打ち、そこから全身に血が駆け巡っていくように感じた。
なぜクラスが違う彼女が現れたのか、どうして家まで送ってくれるのか、冷静であれば変に感じたことも、今の加奈にはどうでもいいことだった。
ただここにシャナンがいる、それだけでよかった。
外はもう日が沈み、降ったばかりの雪が真っ白なビロ―ドの絨毯のように校庭を覆っていた。
雪道を歩き、冷たい風に吹かれても、加奈は寒さをまったく感じなかったのだが、加奈はそのことに気づいていなかった。
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