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この紅茶を飲んだら帰ろう。
そう思いながらアンティーク風のカップを口に運んだ。
その途端、くらくらするような、なんともいえぬ甘い香りが鼻を刺激して、今までの居心地の悪さがすうっと消えた。
「いい香り、なんていう紅茶?」
「ふふ、私の特製のお茶よ。さあ飲んで」
言われるままに加奈は紅茶を口に含んだ。
今度は体中に血がみなぎるような感じがした。
「なんだか元気になる」
「そう? ……私にもその元気を分けてほしいわ」
「え?」
加奈の背後に立っていたシャナンは眼鏡を取り、その青く沈んだ瞳を見開き、加奈の顔を見つめた。
体の奥深くまで見られているのではないかと思わせる、強烈な視線。
眼鏡越しに見た瞳とは違う、強い意志。
加奈はその瞳から目が離せなくなった。
首筋にひやりとしたものが触り、加奈はびくりと肩をすくめた。
シャナンの白い指先が加奈の首筋に吸い付くように這っているのだ。
払いのければいい。
頭ではそう思っても、加奈は抵抗できなかった。
抗いがたいシャナンの視線。
その瞳に囚われて、一時も目を背けられないのだ。
執拗なシャナンの指。
加奈は呼吸が荒くなり、何も考えられなくなってしまった。
ただ恍惚とした表情で、シャナンの行為を受け入れるしかないのだった。
「美しい加奈……私はあなたのその輝きでまた生き続ける」
シャナンの囁き声が加奈の耳をくすぐり、加奈の体は足先までそれに反応してざわついた。
そんな状態の加奈の首にシャナンはそっと唇を押し当てた。
「あ……」
言葉にならない吐息交じりの声が自然ともれる。
シャナンは構わず、今度は加奈の首筋に舌を這わせた。
「シャナン、嫌……女同士でこんな……」
加奈は辛うじて、か細い声で抵抗した。
「本当に嫌かしら」
青い瞳が鋭く光ったように感じた。
獣のような鋭い目つきに加奈は恐怖を覚え、何も言い返せなくなった。
「素敵な夢を見せてあげる」
シャナンの力は強く、抵抗は無駄だった。
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