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「猫飼いたい」
唐突だった。
「は?」
「だから、猫飼いたいんだよ」
彼は動物をすくような性格だっただろうかと思わず首を傾げた。
人でさえ寄せ付けるのを嫌う彼が言い出した言葉にポカンとする。
「なんで急に」
「なんとなく」
「ああ、そう」
「猫、なつかねーんだろうと思ってたんだけどな」
その言い方だと、飼いたい猫が決まっているのだろうが彼がそんなことをいうのが意外すぎて驚いたまま。
でもどうもおかしい、猫を買いたいという彼の目がジッとこちらを見つめている。
蜂蜜みたいな甘い色の瞳がじいっと見ている。
「猫」
染めて傷んだ私の茶色い髪を触る大きな手がくすぐったい。
それから私の口から出た言葉。
「お金かかるからやめときなよ」
私、甘いの嫌いなんだよ。
あなたは甘い色をしているから、きっと私は溶けてしまう。
「気にしねえのに」
「すぐ飽きるよ」
「好きなのに?」
「気の迷いだよ」
「違う」
「どうだかね」
諦めの悪い彼の頭をひとつ叩いておいた。
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