第1話

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「一つ。時間かかりすぎ」  もう一本指が立つ。 「二つ。このままの配置だとお前がここに辿りつけないから、待ち構えてた連中の半分くらいは夕飯に向かわせた」  サタンはもう一度ゲソを銜える。 「わかったか?」 「ふ、ふざけるな! ナメやがって……!」  勇者がギリリと奥歯を噛んで、それから剣の柄を握る拳にぐっと力が入った。それを見てもサタンは組んだ足をほどかない。 「誇り高き勇者よ。名を何と言う?」 「エドワードだ、捻り潰してやるぞ魔王ッ!!」  それから、魔王は勇者が死なない程度に捻り潰し、死にかけだった愉快な仲間たちとともに城の外へと放り出した。  勇者にとって屈辱的すぎるこのエピソードは、のちに魔王が辿る奇怪な運命のきっかけとなることを、まだ誰も知らなかった……。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加