魔女

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かつて、人類を強大な魔物「キール」から守った英雄の一人、ジャンヌの統べる町「ジャスティ」。 この町は高くそびえ立つ漆黒の壁に囲まれて、町の中心にはそれよりも少し低めの塔が立ち、それを取り巻くようにして建物が建っている。 その為、建物は縦に長く、建物同士の密度はきわめて狭い。一歩街中に入ってしまえば人が1人通れるほどの通りと、はるか頭上にそびえるこの町独特の建物が出迎えてくれる。 「はぁ、お腹すいたなぁ。」 私は一人溜め息をつく。ここ数日、何も食べていないのだ。 …そう、私は「孤児」だ。 2年ほど前、私は両親に捨てられ、今はジャスティの細い路地でなんとか生きている。 まだ6歳の私は、お店で働く事が許されていない。だから、他の孤児たちに習って、お店のものを時たま盗んだりしている。 それが悪い事であるとは、分かっている。でも、そうしなければ生きる事なんて出来ない。 「んー…。仕方ない、行って来るか。」 もうドロドロになってしまった灰色の、七分袖のワンピースを軽くはたき、ボロボロで、やせ細ってしまった足を動かした。
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