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「大丈夫?怪我は?」
目の前に現れたのは、金髪の女性。耳が少し隠れるぐらいの髪の長さで、ウェーブがかかっている。その人が身にまとっているのは、剣士顔負けの鎧だ。
知っている、この人は、この町を作った人だ。
「ジャンヌ…さ、ま?」
そう、この人混みはジャンヌ様の凱旋を祝う人たちだったのだ。
私は、ぶつかってしまった時に尻餅をついてしまったので、天を仰ぐようにして彼女を見た。
彼女は不思議そうな目をしている。
「まて、このパン泥棒!!って、じゃ、ジャンヌ様!!?」
先ほどのパン屋の女将は、やっと追いついたものの、すぐに目の前にいる英雄に目を奪われてしまった。
「パン泥棒…?」
ジャンヌは首をかしげた。女将はそうだった、と大げさに手をたたき、ジャンヌ様に説明をしだした。
「そうなんです!この小娘、うちの商品を盗んだんですよ!!」
「…。」
ジャンヌ様は一息の間を空けると、ゆっくりと私の目線に合うようにしゃがんだ。その行動に、私は目を丸くし、周囲の人々はざわめいた。
「…君は、身なりを見る限りでは、孤児なんだね?」
「え…あ、は、い。」
言葉が途切れ途切れになってしまったが、そう答えた。
すると、彼女はじっと私の目を見て、そのまま微笑んだ。
「よかったら、私の住むところまで来ないか?食事を用意しよう。」
周囲のざわめきは、更に大きく膨れ上がった。
「で、でも…。」
「私ならかまわない。…君は、いい魔力を持っている。その力を眠らせるのは惜しいと思っただけだから。どうかな?」
私が、いい魔力を…?
思考が停止してしまいそうだ。がしゃん、と金属がこすれる音がしたかと思えば、彼女が手をこちらに向けて差し出していた。
私は、恐る恐るその手をとった。
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