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「…ルキア」 さらりとした指ざわりの髪をすいていると、いつの間にか動きを止めていたグリムジョーが再度口を開いた。 まっすぐにこちらを見つめる瞳と視線が交わる。 真剣な、それでいてどこか切なげな蒼い瞳。 本当に、私はこの目に弱いな。 ふっと息を吐き苦笑いを浮かべてやると、見下ろすグリムジョーはいぶかしげに眉を寄せた。 「しょうのない……これで、我慢しておけ…」 髪をすいていた手をうなじへと回し、引き寄せてその頭を抱き抱える。 そして彼の耳元で小さく宣告した。 「動け、馬鹿猫」 わずかな間をおいて、首筋にごく弱い風を感じる。 私の意図を察して笑ったのであろう。 見えずともその表情は容易に想像がついた。 相当に入れ込んでいる。 既に末期症状だ。 獰猛なこのケダモノの、さも嬉しそうな微笑みが想像できるなど、な。 「あん…っ…」 命令通りに再開された唐突な律動に、小さく声がもれた。 声量を抑える事だけは注意しながら、すがるように彼に抱き着き、感じるままに甘い声を彼の耳元へとこぼしていく。 顔を寄せ合っているが故に、私の耳を直にくすぐるグリムジョーの吐息がますます熱を帯びていくのが容易に分かり、またそれも私を酔わせていく。 「グリムジョー…っ」 目の前で揺れる蒼。 月光程度では色など分かるはずもないのに、確かに鮮やかな空の色がちかちかと目の奥で瞬く。 その蒼天に私は何度も何度も満たされていった。
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